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フィリピンは国際刑事裁判所 (the International Criminal Court = ICC, フランス語では、la Cour pénale internationale = CPI)から脱退した。昨年に脱退の意向を通知しており、正式に脱退となったのは、一年後の2019年の3月17日付である。
Le Monde の記事によれば、フィリピン政府の発表では5,176名が逮捕時に逃れようとしたために射殺されたが、人権団体(des organisations de défense des droits de l’homme)によれば、実数はその3倍以上だ、と報告しているそうだ。
Le Monde はフランスのマスコミであり、フィリピンに関することが記事になるのは珍しい。大抵は、ヨーロッパか、アフリカの旧フランス領の植民地の記事である。こんなフランスのマスコミにまでドウテルテ大統領の行動は聞こえてくるようだ。
国内でのドウテルテの政策への賞賛とは対照的に、国外での彼の評判は悪い。特に、彼の麻薬の密売者は殺害するという方法がかなりの驚きと嫌悪感で持って受け取られている。
脱退の発端となったので、ICCが昨年の2月にドウテルテ大統領に対して人権侵害で予備調査をすると決めたことだ。直ちにフィリピン政府は反発して、この3月の正式脱退に繋がったわけだ。
フィリピンはマスコミは比較的に自由に報道できる。それゆえに、その政策も注目を浴びやすい。ところが、中国や北朝鮮での人権侵害の事例は何ら報道されず、それゆえに、人権団体は何のアクションも起こせないという状態だ。その意味では、彼にとっては不公平な面もある。
確かに、フィリピンでは麻薬密売者の人権は蹂躙されている。正式の裁判を受けることなく射殺されている。ただ、正式に裁判を行おうとすると大変なことが起こる。司法の世界でも大抵は賄賂が蔓延している。勇気ある人が証人として証言すると、数日後には暗殺されてしまうのだ。そんな事例を山ほど見てきた一般庶民はどちらを応援するであろうか。
ドウテルテの政敵は前大統領のアキノが所属する自由党である。自由党が他国の人権団体に情報を流して外から圧力をかけようとしている。だが、今のところは、ドウテルテ大統領は気にせずに自分の信じるままに行動している。
かなり犯罪者は減ったであろうから、そろそろ犯罪者射殺の方針は緩めてもいいのではと思うが、相変わらずである。頑固なままに、信じるままに、フィリピンという国を平和で犯罪のない国にしようとする彼の努力には敬意をはらいたい気もする。
